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不妊治療と働き方

 

不妊治療と仕事の両立は厳しい…

厚生労働省の補助金を受けて野村総合研究所が行った、不妊治療の実態に関する調査結果(2021年3月30日)によると、男女とも3割以上が不妊治療を続けるに当たって、『仕事を休んだことがある』と回答したとの事です。

働きながら不妊治療を続ける人は、頻繁に通院が必要となるため治療と仕事の両立させることが難しい場面が多々あるようです。

通院回数以外にも、精神面で負担大きいことであったり、体調・体力面での負担から、不妊治療と仕事の両立が難しいケースも多いようです。

今回の調査結果によると、男性の34.9%、女性の37.1%が治療のために仕事を休んだことがあると回答。

また、男性で4.6%、女性で11.2%が、治療のために仕事を辞めたことがあると回答しており、不妊治療は費用(支出)だけでなく、収入にも大きく影響すると考えられます。

是非、不妊治療の助成金制度を利用して、少しでも負担を減らしておきましょう。

(厚生労働省:仕事と不妊治療の両立について

また、実際の勤務先で、不妊治療に対する支援はないと回答した人も6割以上となり、不妊治療と仕事をどうやって両立させていけるか、今後の大きな課題になるでしょう。

厚労省も『企業側の取り組みに不十分な点』を課題としていますが、企業の不妊治療に対する理解を深めるのと同時に、国からも休暇を取得しやすい制度作りの働きかけが必要でしょう。

しかし、単に休みを取らせるように企業に指導しただけでは、企業の生産性を低下させるだけになってしまいます。

そこで、政府は2022年4月の不妊治療に健康保険を適用拡大するなかで、今回の調査結果を具体的な制度設計に生かす考えを示しています。

これに先立ち、2021年度中に中小企業を対象とした、特別休暇制度の導入に対するの助成金の支給を開始する予定です。

(時事ドットコムニュース:不妊治療、3割が「仕事休んだ」 支援制度「なし」も6割―企業の取り組み課題参照)

 

実績のある治療施設が限られる

不妊治療をステップアップしていくと、治療できる施設が限られます。

タイミング指導や、人工授精などの『一般不妊治療』であれば、地域の婦人科で行える場合もありますが、体外受精や顕微授精といった『高度不妊治療』になると、施設数が限られる(全国で600施設程度)うえに、その多くは都心部に集中しています。

また、保険診療で行える卵管の手術、FT(卵管鏡下卵管形成術)が施術できる施設は、全国で約90箇所と決して多くはありません。

そのため、地方から通院するためには、一回の治療のたびに半日か一日の休暇を取らないといけません。

また、治療実績の高い施設は当然ながら患者数も多くなり、希望通りに予約が取りづらい、診療の待ち時間が長くなるなど、不妊治療と仕事の両立が難しくなる要因でもあります。

体外受精や顕微授精が保険適用拡大となった場合、地方の既存のレディースクリニックが、培養設備を確保できれば地域格差は少なくなると思われますが、保険診療を行うための施設要件などが現段階では不明です.

また、そもそも治療実績がない医師やクリニックが保険診療になったといって新規参入しても、既存の施設と同等の治療成績を出すことが出来るかといった問題もあります。

HPなどで、治療成績を公表しているクリニックもありますが、クリニックにおける妊娠の判定を『妊娠反応が出た』とするのか『赤ちゃんの袋(胎嚢)が見えた』とするのか、『赤ちゃんの心拍が確認できた』とするのかは、統一された基準がありません。

妊娠反応が出ただけでは、その後に残念ながら流産となってしまう場合もあり、実際の出産まで至っていない場合がかなり含まれます。

保険適用拡大では妊娠の判定をどのように評価されるのか、これからの動きに注目されます。

 

 

公務員も不妊治療休暇の取得へ

2021年7月28日人事院は、国家公務員が不妊治療を受ける場合に、治療に専念できるよう、年次休暇や病気休暇とは別の休暇制度を新設する方向で検討に入ったようです。

民間企業の制度化に向けて、当然ですが公務員でも同様の休暇制度を作ることになりました。

気になる中身ですが、不妊治療の際に5日、体外受精など、頻繁な通院が必要な場合はさらに5日の最大10日の不妊治療休暇を新設し、有給休暇扱いとなるため収入に影響は少ないです。

柔軟な働き方に対応できるように、1日または1時間単位でも取得できる制度とし、非常勤職員も取得できる方向で検討、2021年8月の国家公務員給与改定勧告に併せて打ち出す予定です。

現状では不妊治療で休むためには、従来の有給休暇を利用しなければならないため、頻繁に使用すると回数が足りなくなってしまいます。

病気休暇の扱いとなるのは、精管や卵管などの治療が必要な場合に限るとのことですので、TESE(精巣内精子回収法)やFT(卵管鏡下卵管形成術)等であれば、病気休暇になるのでしょうね。

(時事ドットコムニュース:国家公務員に不妊治療休暇 最大10日で新設検討―人事院参照)

 

不妊治療は、お金もかかり、時間もかかり、ストレスもかかり…

休暇制度の整備が進み、保険適用拡大とともに不妊治療に優しい社会が出来ていく事を心から望みます。

 

仕事との両立に取り組む企業

2021年11月16日のプレスリリースによると、厚生労働省は不妊治療と仕事との両立に取り組む企業を認定する制度を新設するようです。

これは、『次世代育成支援対策推進法』に基づいて、不妊治療と仕事との両立に取り組む、優良な企業であることを認定する制度です。

今までは、子育てサポートが中心となっていましたが、不妊治療もサポートしていこうといった取り組みになります。

このような取り組みとともに当事者が、不妊治療をしている事を隠したりしないで済む環境が作られることを願います。

 

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